名古屋地方裁判所 平成元年(わ)969号 判決 1990年11月30日
右被告人四名に対する各詐欺被告事件について、当裁判所は、検察官山川景逸出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人Y1及び同Y2をそれぞれ懲役六年に、同Y3を懲役四年に、同Y4を懲役二年六月に処する。
被告人四名に対し、未決勾留日数中各四四〇日をそれぞれその刑に算入する。
理由
(犯行に至る経緯等)
一 aトレーディングサービス株式会社(以下「aトレーディング」という。)は、本店を名古屋市<以下省略>に置き、海外商品取引所に上場された粗糖、大豆等の先物取引の国内における受託業務等を目的として昭和五九年六月一三日に設立された会社であるが、同社は、以前から海外商品先物取引の受託業務を行っていたa1トレーディングサービス株式会社(以下「a1トレーディング」という。)の名古屋支店、岐阜支店、大阪支店の事務所等の物的設備、従業員並びにその顧客を引き継いで、昭和六〇年一〇月一日から、従来のa1トレーディング名古屋支店を本社とし、a1トレーディングの岐阜支店、大阪支店をそれぞれ岐阜支店、大阪支店として営業を開始した。aトレーディングの昭和六一年七月一日当時の従業員数は、営業管理者六名、営業社員四一名、営業準社員一五名、内勤管理者二名、内勤社員一七名の合計八一名であった。
二 a1トレーディングは、本店を東京都中央区<以下省略>に置き、海外商品取引所に上場された粗糖、大豆等の先物取引の国内における受託業務等を目的として昭和五七年七月九日に設立された会社であったが(なお、昭和五八年二月二一日に本店は東京都中央区<以下省略>に移転している。)、国内の商品先物取引受託業者である東海交易株式会社に勤務していたB1は、昭和五八年七月ころ、知人から融資を受け、a1トレーディングを買収して代表取締役となり、東海交易株式会社時代の部下らを誘い、同人らと共にa1トレーディングにおいて海外商品先物取引の受託業務を行うようになり、次第に、静岡支店、岐阜支店、名古屋支店、浜松支店、大阪支店を設置してその営業を拡大していた。また、他方では、B1は、a1トレーディングを買収した後においても、同社の幹部に営業を任せて事業を拡大するためなどの目的で、aトレーディング等の会社を設立したり、同様の目的を有する会社を買収したほか、昭和六〇年五月ころには、香港の先物取引所である香港期貨交易所有限公司(以下「香港先物取引所」という。)の正会員であった新都商品有限公司(以下「新都商品」という。)を買収し、新都商品を買収した後は、香港先物取引所の準会員であったa1トレーディングが顧客から受けた先物取引の売買注文は専ら新都商品に委託して行われるようになった。
三 B1は、昭和六〇年五月ころ、豊田商事株式会社の純金のペーパー商法が詐欺商法であるとして大きな社会問題になったことなどを切っ掛けとして、a1トレーディングの大阪支店等に対しても顧客から苦情や委託保証金の返還要求が相次ぎ、同社の経営が悪化したため、前記のとおりa1トレーディングの物的設備、従業員並びにその顧客をaトレーディングに引き継がせた。しかし、aトレーディングは、三〇〇〇万円の資本金で設立され、昭和五九年七月四日に増資されて六〇〇〇万円の資本金となった会社であるが、設立及び増資にあたってはa1トレーディングからこれに、見合う資金を借り入れ、銀行に一時的に預金して株式払込金保管証明書をとり、登記後直ちに預金を払い戻してa1トレーディングに返還する、いわゆる見せ金による払込の方法がとられ、資本額に相当する会社資産を有しなかった上、設立以来営業活動のなかったいわゆる休眠会社であって、営業を開始した昭和六〇年一〇月一日において、a1トレーディングから引き継いだ顧客に対する委託保証金の返還債務が四億七三三六万九七〇二円であるのに対し、手持の現金、預金は合計三一五万五九二八円にすぎず、営業開始当初から顧客に対する委託保証金の返還が困難な財政状況であり、顧客からの手数料以外にはほとんど収入がなかったので、委託保証金を返還できる確かなあてもなかった。
四 a1トレーディングは、前記のとおり顧客から受けた売買注文を香港先物取引所の正会員に委託するに当たっては、保証金を送金しないですむようにするため、顧客の注文した建玉と同限月、同数の反対玉をa1トレーディングが建てる(いわゆる「向い玉」を建てる)などして、顧客から預かった委託保証金を留保し、人件費等の経費として費消する一方、委託保証金を顧客に返還しないようにするため、顧客に無用な建玉、玉の手仕舞いを繰り返させて手数料を稼いだり、顧客に売買による損失を与えるなどの方法で、顧客の出金要求にはできるだけ応じないようにしていたが、aトレーディングにおいても、前記のとおりの事情から、営業開始以来同様の営業方針がとられていた。
五 すなわち、aトレーディングは、顧客の注文した建玉に対してはできるだけ差玉が生じないように他の客から反対玉の注文をとってこれに向かわせ、それでも生じた差玉にたいしてはaトレーディングの自己玉を向い玉として建てることにより、新都商品に対して保証金を送金しなくてすむようにし、顧客から預かった委託保証金を社内に留保し、人件費等の経費として費消する一方、顧客からの入金額を増やし、顧客に対する出金額を少なくすることを経営の基本方針とし、これを「向上を上げる」として、本社、支店、営業所の副長或いは係長以上の会社幹部が月に一回本社に集まって行なう会議(以下「幹部会議」という。)等を通じて社員に対する指示徹底を図っていた。そして、顧客に対する出金額を少なくして「向上を上げる」ために、①既存の建玉を仕切ると同時に委託保証金限度額一杯の建玉をし、顧客にとって無意味な売買を繰り返す方法で手数料稼ぎをする、②顧客に利益が出たときに、これを委託保証金に組み入れ、その限度額一杯の建玉をしたり(いわゆる「利乗せ満玉」)、相場の状況とは無関係に利益の出ている建玉を仕切ってその反対の建玉をする(いわゆる「途転」)、③以上のような方法で顧客に損失を被らせるため、顧客に何の連絡もせず又は顧客の了解を得ずに建玉をしたり、建玉を仕切ったり(いわゆる「無断売買」)、④顧客に計算上利益が出ている状態で出金要求があった場合にも、これを無視して放置したり、居留守を使って電話の応対に出なかったり、計算上生じたことになっている利益金で増し玉を勧めるなどのいわゆる「客殺し」の方法で出金を免れていたもので、顧客に返還しなければならない金額である委託者総合管理表の差引欄の数字を減らす意味で「有効を減らせ」とか、手数料で顧客に損をさせることを意味する「手数料を振れ」との指示を社員に繰り返していた。
六 被告人Y1は、昭和四二年ころ国内の商品先物取引受託業者である吉原商品株式会社に入社し、その後同五二年から東海交易株式会社に勤務していたが、東海交易株式会社勤務時代の知り合いであるB1に誘われて、昭和六〇年同人が買収した海外商品先物取引の受託業者であるサミットエンタープライズ株式会社浜松支店営業部長に就任し、その後昭和六一年同じく同人が設立した同種のインフォメーションサービス株式会社東京本社常務取締役に転じた後、昭和六一年七月一日、B1の後任としてaトレーディングの代表取締役となり、以後同社の業務全般を統括していた。
被告人Y2は、昭和五六年に東海交易株式会社に入社し、浜松支店勤務当時の上司を介してB1から誘われてa1トレーディングに入社し、本社の営業課長、静岡支店長を経て、昭和五九年一〇月には取締役副部長となり、昭和六〇年一月ころ以降は同社名古屋支店に常駐していたが、aトレーディングが営業を開始した昭和六〇年一〇月以降は同社の取締役営業部長となり、昭和六二年一月には専務取締役に就任していた(但し、同年七月には同社を退社している。)もので、aトレーディング代表取締役のB1や被告人Y1を補佐して同社の業務全般を統括していた。
被告人Y3は、東海交易株式会社に勤務していたが、同社勤務時代の知り合いであるB1に誘われてa1トレーディングに入社し、昭和六〇年五月には同社の取締役になると共に前記インフォーメーションサービス株式会社の取締役管理部長に就任し、B1が設立、買収した海外商品先物取引の受託業者である各会社の顧客からの苦情処理を担当していたが、aトレーディングが営業を開始してからは、同社の取締役に就任して、同社の顧客からの苦情処理をも担当し、昭和六二年一月にはaトレーディングの常務取締役に就任するなど主に顧客からの苦情処理に当たる管理部門を統括していた。
被告人Y4は、昭和五三年東海交易株式会社に入社し、同社に勤務していたが、同社勤務時代の知り合いであるY3に誘われてB1が設立した海外商品先物取引所の事務代行を業とする株式会社メディエイションカンパニーに入社し、aトレーディングが営業を開始してからは、同社の本社内勤副長、内勤課長、内勤次長等として(但し、昭和六二年一一月に同社を退社している。)、同社の営業部門、管理部門を除く業務、総務、経理の各部門を総称する内勤の責任者を勤め、主に玉の管理、注文伝票の作成等の業務を担当していた。
七 分離前の相被告人B2は、昭和五八年五月ころ、a1トレーディングに入社し、営業を担当して昇進し、昭和六〇年八月ころには同社の岐阜支店長に就任していたが、同年一〇月にaトレーディングが営業を開始したため、以後は同社の岐阜支店長となり、同年一一月にはaトレーディング本社副長(第二支店長)に、昭和六一年六月には本社次長にそれぞれ昇進した後、昭和六二年一月に取締役副部長に就任し、昭和六三年六月に取締役を辞任したが、その後も同社に勤務していた。
分離前の相被告人B3は、昭和五九年八月ころ、a1トレーディングに入社し、同社名古屋支店において営業を担当して昇進し、aトレーディングが営業を開始してからは同社の本社第一支店係長代行となった後、昭和六〇年一一月に大阪支店長代理、昭和六一年一月に本社第二支店長、同年二月に岐阜支店長、同年六月に本社支店長となり、その後本社本店長となったが、昭和六二年八月からは本社営業課長として勤務していた。
分離前の相被告人B4は、昭和五八年一一月ころ、a1トレーディングに入社し、営業を担当して昇進し、昭和五九年九月に同社の大阪支店長に就任していたが、aトレーディングが営業を開始してからは同社の大阪支店長となり、昭和六一年二月に大阪支店が閉鎖になったため本社に転勤となったが、本社副長代行(第一支店長)を経て、同年六月には岐阜支店長となり、昭和六三年には営業部次長に就任していた。
(罪となるべき事実)
被告人Y1、同Y2、同Y3、同Y4は、分離前の相被告人B2、同B3、同B4ほか多数のaトレーディングの社員と共謀の上、一般の顧客が海外商品市場における先物取引の知識に乏しいことに乗じ、真実は顧客の注文する売買の差玉に対してaトレーディングが向い玉を建てることにより、顧客から委託保証金として受領する金員等を同会社に留保して同会社の経費として費消する一方で、顧客に委託保証金限度額一杯の反復売買をさせたり、無断売買をしたり、手仕舞いをことさらに引き延ばすなどのいわゆる客殺しの方法により顧客に損害を与え、結局は顧客から受領する委託保証金は極力返還しない意図であり、かつ、返還できる確かなあてもないのに、これらの情を秘し、あたかも顧客のために粗糖等の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日顧客から預かった委託保証金と同取引による差益金を確実に顧客に返還するように装って、香港商品取引所における海外先物取引の委託保証金名下に顧客から金品を騙取しようと企て
第一 別紙犯罪事実一覧表(一)記載のとおり、昭和六一年八月一三日ころから同年九月二六日ころまでの間、前後七回にわたり、岐阜県多治見市<以下省略>A1方において、A2に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の分離前の相被告人B4自ら又は右aトレーディング社員B5を介し、直接あるいは電話を使用し、前記の情を秘してあたかも右A2のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をしてその都度その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり、昭和六一年八月一四日ころから同年九月二九日ころまでの間、前後七回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載のaトレーディング岐阜支店ほか二か所において、同女から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の合計一一二〇万円を現金の交付又は同会社名義の普通預金口座への振込み送金の方法で受けてそれぞれ騙取し
第二 別紙犯罪事実一覧表(二)記載のとおり、昭和六一年一一月一三日ころから同年一二月八日ころまでの間、前後五回にわたり、aトレーディング岐阜支店ほか三か所において、A3に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の同社社員B5を介し、前同様、前記の情を秘してあたかも右A3のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をして、その都度その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり、同年一一月一三日ころから同年一二月八日ころまでの間、前後五回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載の愛知県犬山市<以下省略>の一岐阜信用金庫犬山支店ほか二か所において、同女から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の現金合計一四六五万円及び小切手一通(額面金額三七五万八三八八円)の交付を受けてそれぞれ騙取し
第三 別紙犯罪事実一覧表(三)記載のとおり、昭和六一年一一月二八日ころから同六二年二月一二日ころまでの間、前後四回にわたり、愛知県小牧市<以下省略>A4方ほか一か所において、A5に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の分離前の相被告人B2自ら又はaトレーディング社員B6ほか一名を介し、直接あるいは電話を使用し、前同様、前記の情を秘して、あたかも右A5のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をして、その都度その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり、同六一年一一月二九日ころから同六二年二月一二日ころまでの間、前後四回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載の愛知県小牧市<以下省略>A4方ほか一か所において、右A5から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法記載の合計二四九万八四〇〇円を現金の交付又は同会社名義の普通預金口座への振込み送金の方法で受けてそれぞれ騙取し
第四 別紙犯罪事実一覧表(四)記載のとおり、昭和六一年一二月二日ころから同六二年五月一二日ころまでの間、前後七回にわたり、愛知県小牧市<以下省略>A6方ほか一か所において、A7に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の分離前の相被告人B2及び同B3自ら又はaトレーディング社員B7を介し、直接あるいは電話を使用し、前同様、前記の情を秘して、あたかも右A7のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をして、その都度その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり同六一年一二月三日ころから同六二年五月一五日ころまでの間、前後六回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載のaトレーディング本社ほか三か所において、右A7から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の現金合計二〇〇九万九二〇〇円及び小切手五通(額面金額合計九五〇万円)の交付又は同会社名義の普通預金口座への振込み送金の方法で受けてそれぞれ騙取し
第五 別紙犯罪事実一覧表(五)記載のとおり、昭和六一年七月一四日ころから同六二年三月三〇日ころまでの間、前後七回にわたり、愛知県岡崎市<以下省略>A8方ほか一か所において、同女に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の分離前の相被告人B2及び同B3自ら又はaトレーディング社員B8ほか一名を介し、直接あるいは電話を使用し、前同様前記の情を秘して、あたかも右A8のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引のよる差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をしてその都度その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり、昭和六一年七月一五日ころから同六二年三月三〇日ころまでの間、前後六回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載のaトレーディング本社ほか一か所において、同女から委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の合計五八九万六〇〇〇円を現金の交付又は同会社名義の普通預金口座への振込み送金の方法で受けてそれぞれ騙取し
第六 別紙犯罪事実一覧表(六)記載のとおり、昭和六一年七月二六日ころから同六二年二月一〇日ころまでの間、前後九回にわたり、岐阜県山県<以下省略>A9方ほか一か所において、同女に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の分離前の相被告人B4自ら又はaトレーディング社員B5を介し、直接あるいは電話を使用し、前同様、前記の情を秘して、あたかも右A9のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をして、その都度その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり、昭和六一年七月二九日ころから同六二年二月一〇日ころまでの間、前後九回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載の岐阜県山県郡<以下省略>の二株式会社十六銀行高富支店北側駐車場ほか二か所において、同女から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の合計七四九万七六〇〇円を現金の交付又は同会社名義の普通預金口座への振込み送金の方法で受けてそれぞれ騙取し
第七 昭和六一年一一月二四日ころ、愛知県春日井市<以下省略>A10方において、同女に対し、aトレーディング社員B7を介し、前同様、前記の情を秘して、あたかも右A10のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、「砂糖の売買については安いときに買って高いときに売るわけですから、必ずもうかります。これは、豊田商事で損をさせられてしまった人の書類ですが、この人も、うちの会社ではたくさんもうけて豊田商事での損を取り返しています。砂糖の売買は一枚とか二枚という単位で行います。そして、一枚につき四〇万円の保証金が必要です。A10さんには最低一〇枚やってほしい。一〇枚だと四〇万円の保証金が必要ですが、この四〇〇万円は、三か月もすれば一〇〇〇万円以上になっていますよ。」旨虚構の事実を申し向け、同女をして、その旨誤信させ、よって、同月二五日ころ、愛知県春日井市<以下省略>東濃信用金庫鷹来支店において、同女から、右鷹来支店の係員を介し、委託保証金名下に、現金五二七万四七六六円の交付を受け、引き続き、同市<以下省略>春日井鷹来郵便局において、同女から、同郵便局の係員を介し、委託保証金名下に、現金一三一万一二〇四円の交付を受けて騙取り
第八 別紙犯罪事実一覧表(七)記載のとおり、昭和六一年九月三日ころから同六二年二月一七日ころまでの間、前後七回にわたり、岐阜県多治見市<以下省略>A11方ほか二か所において、同女に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載のaトレーディング社員B9ほか二名を介し、直接あるいは電話を使用し、前同様前記の情を秘して、あたかも右A11のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をしてその都度その旨誤信させ、よって同一覧記載のとおり、昭和六一年九月四日ころから同六二年二月二四日ころまでの間、前後七回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載の岐阜県多治見市<以下省略>多治見郵便局駐車場に駐車中の普通乗用自動車内ほか六か所において、同女から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の現金合計一三六〇万円の交付を受けてそれぞれ騙取し
第九 別紙犯罪事実一覧表(八)記載のとおり、昭和六一年九月九日ころから同六二年四月三日ころまでの間、前後七回にわたり、岐阜県可児市<以下省略>A12方ほか一か所において、同女に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の分離前の相被告人B4自ら又はaトレーディング社員B5を介し、直接あるいは電話を使用し、前同様、前記の情を秘して、あたかも右A12のために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言欄記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をして、その都度その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり、昭和六一年九月一〇日ころから同六二年四月三日ころまでの間、前後八回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載の右A12ほか二か所において、同女から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の合計六六一万円を現金の交付又は同会社名義の普通預金口座への振込み送金の方法で受けてそれぞれ騙取し
第一〇 別紙犯罪事実一覧表(九)記載のとおり、昭和六二年四月八日ころから同年五月一二日ころまでの間、前後六回にわたり、愛知県一宮市<以下省略>A13方ほか一か所において、同女に対し、同一覧表欺罔行為者欄記載の分離前の相被告人B4自ら又はaトレーディング社員B10ほか一名を介し、直接あるいは電話を使用し、前同様、前記の情を秘して、あたかも右A13にために粗糖の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日同女から預かった委託保証金と同取引による差益金を同女に確実に返還するように装い、同一覧表欺罔文言記載のとおり、それぞれ虚構の事実を申し向け、同女をして、その都度、その旨誤信させ、よって、同一覧表記載のとおり、昭和六二年四月九日ころから同年五月一三日ころまでの間、前後六回にわたり、同一覧表騙取場所欄記載の愛知県一宮市<以下省略>一宮信用金庫浅井支店前路上に駐車中の普通乗用自動車内ほか五か所において、同女から、委託保証金名下に、同一覧表騙取金額及び騙取方法欄記載の現金合計三八二万〇七〇〇円の交付を受けてそれぞれ騙取したものである。
(証拠の標目)
判示全事実について
一 被告人Y1及び同Y2の当公判廷における各供述
一 被告人Y1の検察官に対する平成元年六月八日付け、同月一三日付け(二通)、同月一五日付け及び同月二〇日付け各供述調書
一 被告人Y1の司法警察員に対する同月二日付け、同月三日付け、同月四日付け、同月五日付け、同月六日付け、(二通)、同月七日付け(四通)、同月一一日付け、同月一二日付け(枚数一五枚のもの)、同月一八日付け(枚数一四枚のものと枚数二三枚のもの)、同月一九日付け、同月二六日付け及び同年八月一一日付け(枚数一七枚のもの)各供述調書
一 被告人Y2の検察官に対する同年六月六日付け、同月八日付け、同月一〇日付け、同月一二日付け(二通)及び同月一七日付け各供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同年五月三〇日付け、同年六月四日付け、同月五日付け、同月七日付け、同月九日付け、同月一一日付け(二通)、同月一二日付け、同月二〇日付け及び同年八月一七日付け各供述調書
一 被告人Y3の検察官に対する同年六月八日付け、同月一三日付け、同月一七日付け及び同月一九日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月二日付け(二通)、同月三日付け、同月四日付け(二通)、同月五日付け、同月六日付け(二通)、同月九日付け(三通)、同月一〇日付け(二通)、同月一五日付け(二通)、同月一九日付け、同月二〇日付け(三通)及び同年八月一〇日付け、(枚数一七枚のもの)各供述調書
一 被告人Y4の検察官に対する同年四月一二日付け、同月一五日付け、同月一九日付け、同月二一日付け、同年六月七日付け、同月一三日付け及び同月一九日付け各供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月三日付け、同月五日付け、同月八日付け、同月一〇日付け、同月一二日付け及び同月一九日付け各供述調書
一 B2の検察官に対する同月七日付け、同月一二日付け、同月一四日付け、同月一六日付け、同月一九日付け及び同月二〇日付け各供述調書
一 B2の司法警察員に対する同月二日付け、同月四日付け、同月五日付け、同月六日付け同月九日付け、同月一七日付け(枚数六八枚のもの)、同月二〇日付け、同月二二日付け及び同年八月一六日付け各供述調書
一 B3の検察官に対する同年六月七日付け、同月一〇日付け、同月一一日付け、同月一三日付け及び同月一五日付け各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月三日付け、同月四日付け(二通)、同月五日付け、同月八日付け、(三通)、同月九日付け(二通)、同月一二日付け(枚数七枚と一一枚のもの)、同月一六日付け(枚数二〇枚のもの)及び同年八月一六日付け各供述調書
一 B4の検察官に対する同年六月六日付け、同月一〇日付け、同月一一日付け、同月一五日付け(枚数一二五枚にもの)及び同月二〇日付け各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月三日付け、同日四日付け、同月六日付け、同月七日付け(二通)、同月八日付け、同月一一日付け、(二通)、同月一九日付け(枚数二一枚のもの)、同月二〇日付け(三通)及び同年八月一七日付け各供述調書
一 C1(二通)、C2、C3、C4、C5、C6、B10、C7(二通)、C8及びC9(二通)の検察官に対する各供述調書
一 C1、C10(三通)、C11(三通)、B1(二通)、C9及びC12(二通)の司法警察員に対する各供述調書
一 司法警察員C13作成の同年二月二日付け、同月三日付け、同月六日付け、同年四月三日付け及び同月一七日付け各捜査報告書
一 司法警察員上C14作成の同年二月三日付け、同年三月三〇日付け、同年五月九日付け、同年六月九日付け及び同月一一日付け各捜査報告書
一 司法警察員C15作成の昭和六二年八月三一日付け、同六三年四月二一日付け、平成元年一月三一日付け、同年二月一日付け及び同月三日付け各捜査報告書
一 司法警察員C16作成の同年二月六日付け及び同年四月二〇日付け各捜査報告書
一 司法警察員C17作成の同年五月一一日付け捜査報告書
一 司法警察員C18作成の昭和六二年一〇月七日付け捜査報告書
一 司法警察員C19作成の昭和六三年三月一六日付け、平成元年二月二日付け及び同月六日付け各捜査報告書
一 司法警察員C20作成の同年六月一九日付け捜査報告書
一 司法巡査作成の捜査報告書
一 登記簿謄本三通
判示犯行に至る経緯等の事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同年五月三〇日付け、同年六月三日付け及び同月一六日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同年五月三〇日付け及び同年六月一七日付け(枚数一五枚のもの)各供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同年五月三〇日付け供述調書
一 B2の司法警察員に対する同日付け供述調書
一 B3の司法警察員に対する同日付け供述調書
一 B4の司法警察員に対する同日付け及び同年六月一四日付け各供述調書
判示第一及び第二事実について
一 B3の司法警察員に対する同月一四日付け供述調書(枚数三〇枚のもの)
一 B5の検察官に対する同年三月三日付け、同月四日付け及び同年五月一一日付け各供述調書
判事第一事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同年六月九日付け及び同月一〇日付け各供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月一三日付け(枚数五五枚のもの)及び同月一四日付け供述調書(枚数二四枚のもの)
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月一二日付け供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月一三日付け供述調書(枚数二八枚のもの)
一 B2の司法警察員に対する同月一三日付け(枚数四九枚のもの)及び同月一五日付け(枚数二二枚のもの)各供述調書
一 B4の検察官(同月一四日付け)並びに司法警察員(同月一二日付け及び同月一三日付けで枚数四三枚のもの)に対する各供述調書
一 B5(同年四月二〇日付け)及びA2(二通)の検察官に対する各供述調書
判示第二及び第四事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同年六月一八日付け供述調書(枚数二枚のもの)
一 B3の司法警察員に対する同月一七日付け供述調書判示第二事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同月一二日付け供述調書(枚数八六枚のもの)
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月一六日付け供述調書二通
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月一三日付け及び同月一四日付け(枚数二枚のもの)各供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月一三日付け供述調書(枚数二二枚のもの)
一 B2の司法警察員に対する同月一三日付け(枚数四一枚のもの)、同月一五日付け(枚数二八枚のもの)及び同月一七日付け(枚数三枚のもの)各供述調書
一 B4の検察官(同月一五日付けで枚数八九枚のもの)並びに司法警察員(同月一三日付けで枚数六五枚のものと枚数八枚のもの及び同月一九日付けで枚数三枚のもの)に対する各供述調書
一 B5(同年四月一四日付け)及びA3(二通)の検察官に対する各供述調書
一 司法警察員作成の写真撮影報告書
判示第三事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同年六月一二日付け供述調書(枚数五六枚のもの)
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月一三日付け(枚数三七枚のもの)及び同月一四日付け(枚数二〇枚のもの)各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月一四日付け供述調書(枚数三三枚のもの)
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月一四日付け供述調書
一 B2の司法警察員に対する同月一一日付け及び同月一五日付け(枚数三一枚で自己の云々で始まるもの)各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月一四日付け(枚数二九枚のもの)及び同月一六日付け(枚数一三枚のもの)各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月一六日付け供述調書二通(枚数三一枚のものと八枚のもの)
一 A5、B6(二通)、C21(同月一二日付け、同月一四日付け及び同月一九日付け)の検察官に対する各供述調書
判示第四事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同月一四日付け供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月一五日付け及び同月一九日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月一四日付け(枚数三五枚のもの)及び同月一七日付け(枚数二枚のもの)各供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月一六日付け及び同月一七日付け各供述調書
一 B2の司法警察員に対する同月一〇日付け、同月一五日付け(枚数三一枚でメーコーは云々で始まるもの)及び同月一七日付け(枚数七枚のもの)各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月一二日付け(枚数五一枚のもの)及び同月一四日付け(枚数五八枚のもの)各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月一六日付け(枚数三七枚のものと二一枚にもの)及び同月一九日付け(枚数六枚のもの)各供述調書
一 A7(二通)、C22、B7(同年二月二一日付け、同月二二日付け、同月二三日付け、同年三月一日付け、同年四月一七日付け及び同年五月九日付け)の検察官に対する各供述調書
一 司法警察員C23作成の昭和六三年四月一三日付け捜査関係事項照会書
一 C24作成の捜査関係事項照会回答書
判示第五ないし第一〇事実について
一 司法警察員上C14作成の平成元年七月一二日付け及び同月一四日付け捜査報告書
判示第五事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同月一八日付け供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月二五日付け及び同月二九日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月一八日付け供述調書(枚数四一枚のもの)
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月一八日付け及び同月二五日付け各供述調書
一 B2の司法警察員に対する同月七日付け(枚数三七枚のもの)及び同月一一日付け各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月五日付け及び同月六日付け各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月一八日付け及び同月二一日付け各供述調書
一 A8、C21(同年八月二九日付け)、B8及びB7(同月三〇日付け)の検察官に対する各供述調書
一 司法警察員C25作成の昭和六二年一〇月九日付け及び同月一二日付け各捜査報告書
判示第六事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同年七月二五日付け供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月七日付け、同月一一日付け及び同月二〇日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月二四日付け供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月二〇日付け供述調書
一 B2の司法警察員に対する同月一四日付け、同月一八日付け及び同月二一日付け(枚数一一枚のもの)各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月一八日付け及び同月一九日付け各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月三日付け(二通)及び同月七日付け各供述調書
一 A9(二通)並びにB5(同年八月二三日付け及び同月二五日付け)の検察官に対する各供述調書
一 司法警察員C17作成の昭和六二年九月二八日付け捜査報告書
判示第七事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する平成元年七月一九日付け供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月一七日付け及び同月一八日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月一八日付け供述調書(枚数三二枚のもの)
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月二六日付け供述調書
一 B2の司法警察員に対する同月五日付け、同月七日付け(枚数一二枚のもの)及び同月一九日付け各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月一一日付け及び同月一四日付け各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月一七日付け及び同月一九日付け各供述調書
一 A10及びB7(同年八月九日付け)の検察官に対する各供述調書
一 司法警察員C17作成の昭和六二年九月二〇日付け捜査報告書
判示第八ないし第一〇事実について
一 被告人Y1の検察官に対する平成元年一〇月二七日付け供述調書
一 被告人Y2の検察官に対する同月二五日付け供述調書
一 被告人Y3の検察官に対する同月二六日付け供述調書
一 被告人Y4の検察官に対する同月三〇日付け供述調書
一 B4の検察官に対する同月二六日付け供述調書
判示第八事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する同年八月七日付け及び同月一一日付け(枚数六四枚のもの)各供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月一四日付け及び同月一九日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月九日付け及び同月一〇日付け(枚数一四枚のもの)各供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月一四日供述調書付け(枚数五八枚のもの)
一 B2の司法警察員に対する同月七日付け及び同月九日付け各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月八日付け及び同月一五日付け各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月七日付け、同月八日付け及び同月一〇日付け各供述調書
一 A11の検察官に対する供述調書
一 B9、B5(同月三日付けで枚数三〇枚のもの)及びB10(昭和六三年三月一一日付けで枚数一二枚のもの)の司法警察員に対する各供述調書
一 司法警察員C15作成の昭和六二年九月四日付け捜査報告書
判示第九事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する平成元年八月一日付け及び同月八日付け各供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同月二日付け及び同月九日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同月一〇日付け供述調書(枚数四二枚のもの)
一 被告人Y4の司法警察員に対する同月五日付け及び同月一四日付け供述調書(枚数五二枚のもの)
一 B2の司法警察員に対する同年七月二七日付け、同年八月一一日付け及び同月一八日付け各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同月一日付け及び同月七日付け各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同年七月二六日付け、同月二八日付け、同月三一日付け及び同年八月五日付け各供述調書
一 A12の検察官に対する供述調書
一 B5の司法警察員に対する同年六月二七日付け、同月二八日付け及び同年八月三日付け(枚数七枚のもの)各供述調書
一 司法警察員C17作成の昭和六三年一月二〇日付け捜査報告書
判示第一〇事実について
一 被告人Y1の司法警察員に対する平成元年七月二一日付け及び同月二五日付け各供述調書
一 被告人Y2の司法警察員に対する同年八月四日付け及び同月八日付け各供述調書
一 被告人Y3の司法警察員に対する同年七月二五日付け供述調書
一 被告人Y4の司法警察員に対する同年八月一〇日付け供述調書
一 B2の司法警察員に対する同年七月二一日付け及び同年八月八日付け各供述調書
一 B3の司法警察員に対する同年七月二五日付け及び同月二八日付け各供述調書
一 B4の司法警察員に対する同月五日付け、同月一〇日付け、同月一四日付け及び同年八月二日付け各供述調書
一 A13の検察官に対する供述調書
一 B10(昭和六三年三月一一日付けで枚数二二枚のもの)及びC21(二通)の司法警察員に対する各供述調書
一 司法警察員C17作成の昭和六三年三月三〇日付け捜査報告書
一 司法警察員C26作成の昭和六二年一〇月二九日付け捜査関係事項照会書謄本
一 愛知県前野郵便局長作成の捜査関係事項照会回答書
(事実認定の補足説明)
被告人Y3及び同Y4は当公判廷において、共謀の事実を否認し、右被告人の各弁護人もその旨主張しているので、以下補足して説明を加えることとする。
本件における各詐欺の実行行為は、顧客のために先物取引の受託業務を誠実に行う意思がなく、顧客から受領した委託保証金は、社内に留保して自由に費消する一方で顧客に極力返還しない意図であり、かつ、返還できる確かなあてもないのに、これを秘して、あたかも顧客のために先物取引の受託業務を誠実に行い、預かった委託保証金と同取引による差益金を後日確実に返還するかのように装って委託保証金名下に金員を受け取ったことにあり、したがって、この点についての相互の意思連絡、認識・認容があれば、右詐欺行為の共謀が認められる。
前掲各証拠及びこれによって認定し得た前記(犯行に至る経緯等)で判示したところからも明らかなように、aトレーディングは前身であるa1トレーディングから多額の委託保証金返還債務を引き継ぎ、これを返還できる確かなあてもないまま営業を開始したものであり、営業開始の当初から、顧客から預かった委託保証金を社内に留保して、これを会社経費に費消しており、委託保証金が香港の正会員である新都商品有限公司に対する売買保証金として流出することを防止するため、新都商品に対しては差玉・向い玉による両建て注文をして売買保証金の支払いを回避し、同時に顧客に対しては極力手数料と売買取引で損失を被らせる方法で顧客から預かった委託保証金を返還しないようにしていたことが認められる。そして、メーコートレーデイングはこのような経営実態に基づいて「向上を上げる」ことを経営の基本方針としていたが、この「向上を上げる」とは新規客の勧誘や既存客からの増し玉の注文によりできるだけ多くの委託保証金を預かる一方、手数料と売買取引損で客を損勘定にもっていくことを意味し、また、顧客に対する出金を減らすことについては「有効を減らせ。手数料を振れ。」という言葉が用いられていたが、「有効」とは委託者総合管理表の差引欄の数字、すなわち顧客に返還しなければならない金額を指し、「有効を減らせ。」とは顧客を損勘定にもっていくことを意味し、また、「手数料を振れ。」とは無意味な売買を重ねるなどして手数料で顧客に損をさせることを意味していたことが認められる。
被告人Y3は、a1トレーディングの取締役を経て昭和六一年一二月ころからaトレーディングが本社に常駐し、同社の取締役として同社の管理部門を統括していたものであり、毎月の幹部会議に出席して、その席上、被告人Y1や同Y2が「向上を上げろ。」と叱咤激励しているのを耳にしていたばかりでなく自ら出席者に対しても「今は、結構、弁護士が入っている。しかし、そんなことは気にせずに、客には何を言ってもいいから頑張ってください。あとのことは私がなんとかします。」などと発言していて、aトレーディングの前記基本的な営業方針を知悉していたことが認められる。
また同被告人は顧客からの苦情を受ける管理業務を通してもaトレーディングが無断売買などの手口を用いて顧客を損勘定にもっていったり、手仕舞いの拒否、引き延ばしをしていたことを承知しており、この点からも被告人Y3がaトレーディングの前記経営方針及び経営方法を知りながら、管理部長になることを引き受け、業務を遂行していたものと認められ、そうである以上、同被告人の本件各犯行についての共謀は優にこれを認めることができる。
次に、被告人Y4が、前記aトレーディングの経営方針や経営方法を十分に認識していたことは、被告人 Y4自身が捜査段階で全面的に認めているところである。
同被告人は、内勤の責任者として、委託者総合管理表、現金日報等を作成しており、これらによって、顧客が損害を蒙っている状況や、aトレーディングの財務状態が顧客に対して返還すべき委託保証金などに見合うだけの現金預金がない状態であることも十分認識しており、その上で自己の業務を遂行したものであることが認められ、同被告人にもまた共謀は成立するといわなければならない。
(法令の適用)
被告人四名の判示第一ないし第一〇の各所為は、いずれも包括して刑法六〇条、二四六条一項に該当するところ、以上の各罪は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第四の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人Y1及び同Y2を各懲役六年に、同Y3を懲役四年に、同Y4を懲役を二年六月に処し、同法二一条を適用して被告人四名に対し各未決勾留日数中四四〇日をそれぞれの刑に参入することとし、被告人Y1、同Y3及び同Y4の訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項ただし書を適用して右被告人三名に負担させないこととする。
(量刑の事情)
一 本件は、海外商品先物取引の受託業務等を目的とするaトレーディングの役員や営業担当の幹部社員であった被告人らが、同社のほか多数の社員と共謀の上、一般の顧客が海外商品市場における先物取引の知識に乏しいことに乗じ、海外先物取引の委託保証金名下に、被害者らから金員を騙取したという、組織的かつ計画的な詐欺事犯である。
aトレーディングにおいては、まず、電話セールスの仕事を担当する社員が、電話帳を利用して一般家庭に無差別に電話をかけ、相手の資産状況等を聞き出した上、短期間に安全に利益が上がる利殖方法がある旨を申し向けてその反応を窺い、営業社員の勧誘に従う見込があると判断された家庭について、営業社員が直接訪問して勧誘する方法をとっていたものであるが、本件においては、営業社員は、いずれも海外商品市場における先物取引の知識や社会的経験の乏しい家庭の主婦に対し、その無知に乗じて、aトレーディングの営業方針を秘し、あたかも顧客のために粗糖等の先物取引の受託業務を誠実に行い、後日、顧客から預かった委託保証金と同取引による差益金を確実に顧客に返還するように装って、言葉巧みに虚言をろうし、誤信した被害者に香港先物取引の売買を委託することを承諾させ、その委託保証金名下に現金を騙取し、その後も、被害者に資産が残されている限り執拗に取引を継続させて更に現金等を騙取していたもので、その手口は巧妙かつ悪質である。
二 本件は、本社及び岐阜支店において昭和六一年七月から同六二年五月までの間に被害者一〇名に対しなされたものであるが、その被害額だけでも合計一億〇五七一万円余と多額であり、被害者にとって、将来の生活設計の基盤等のため営々として蓄えた貴重な財産を失ったことによる経済的損害が大きいことはもとより、その巧妙かつ悪質な手口によって受けた精神的衝撃も大きいものがあったと認められるところ、被害者が弁護士にaトレーディングとの交渉を依頼したことにより、被害額の一部について回復がなされているが、相当部分の被害回復は未了であり、今後もその見込があるとは認められない。
三 以上の事情だけをみても、本件に加担した被告人らの刑事責任は重いといわざるを得ないところ、被告人Y1はaトレーディングの代表取締役として、被告人Y2は取締役、専務取締役として被告人Y1を補佐し、いずれも同社の業務全般を統括して、「向上を上げる」ことを同社の経営の基本方針とし、率先して他の幹部社員にその旨の指示を与え、被害を増大させていたものである上、自らは給与、賞与などとして被告人Y1において代表取締役となった昭和六一年七月以降昭和六二年五月までの間に合計一九一五万円を、同Y2においてはaトレーディングが営業を開始した昭和六〇年一〇月から同六二年五月までの間に合計二五七〇万円をそれぞれ受け取っていたもので、その責任は二人とも共犯者中最も重いといわざるを得ない。
また、被告人Y3は、aトレーディングの取締役、常務取締役として管理部門を統括し、取引の終了した顧客に対し極力委託保証金を返還しないようにして、同社の営業活動を裏から支え、営業部門責任者らが向上を上げるよう叱咤激励していたもので、本件各犯行に果した役割は大きく、自らは昭和六〇年一〇月以降同六二年五月までの間に給与、賞与などとして一一六〇万円を受け取っていたもので、その責任は被告人Y1、同Y2に次いで重いものがある。
被告人Y4は同社の内勤副長、内勤課長、内勤次長としてその業務、総務及び経理部門を統括し、玉の管理、注文伝票の作成等の業務を担当し、時には内容虚偽や架空名義の文章等を作成し、無断売買にもかかわるなどして本件各犯行に加担していたもので、昭和六〇年一〇月から同六二年五月までの間に給与、賞与などとして一〇四四万円余を受け取っていたもので、その刑事責任は分離前の相被告人も含めた共同被告人中では最も軽いとはいえ、やはり重いといわざるを得ない。
四 したがって、被告人らにおいて、自らの行為によって被害者に損害を与えたことにつき反省し、一部被害を弁償していること、被告人Y1には二十数年前に執行猶予に付された窃盗事犯の前科があるのみで、その余の被告人らには前科、前歴がないことなど斟酌すべき諸事情を考慮しても、被告人らは、いずれも主文掲記の刑は免れない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 小島裕史)
<以下省略>